(彼が買い物をしに店へ行くと見知った相手と顔を合わせることになった)
「⋯⋯」
(彼が無言のままだったので男性は苦笑して口を開いた)

『ナツキ、久しぶりだね。元気にしてたかい?』
「⋯⋯まあ、一応」
『弟が君と喧嘩して家を追い出したっていうのを聞いてね。
君が何処に行ったか分からないって言うから心配してたんだよ。
そしたら私の同僚が見つけたらしくて──』
「あの
メイド
か」
『君たちは相変わらずだね。
なんであれ無事だと知れて良かったよ。
それとナツキ、今は女性の所に住ませてもらっているそうだね』
「それもあの女が喋ったのか。⋯⋯ったく。
ん?ていうか、俺あの女にそういうこと教えてねぇのになんで知ってたんだ?」
『私には分からないけど、多分、誰かに探させていたのかもしれないな』
「サラッと恐ろしいこと言うなよ」
『まあ、私の憶測でしかないけどね。
彼女なりにナツキを心配していたはずだよ。
ああ、それとナツキ。もし追い出されたら私の所においで。部屋くらいなら用意できるからね』
「いや、部屋って屋敷の中だろ?あのメイドと暮らすことになるなら野宿の方がマシだわ」
『はは。たくましくなったね。
じゃあ、私は仕事の途中だからまた時間が出来たらゆっくり話そう』
(男性はそう言って立ち去って行った。彼は複雑な思いで彼女の家へと向かったのだった)