ルドベキア情報室室長、ノルベール・ローワンが三日間に渡る仕事を終わらせ、たまには午後の散歩でもしようかと外に出たのは深夜3時の事であった。

12時間分の認識齟齬に気付かず「今日はえらく静かだな。それに曇っていてまるで夜のようだ」などとぼんやり思考した直後、己が根本的に間違っていた事に気付き押し寄せる虚無感に包まれているところである。


部屋に戻るにしても何か収穫が欲しい。
外に出た意味がーーと辺りを見回し、目についたのは七夕用に飾られた笹だった。

団員たちが短冊や折り紙をちりばめた笹に願い事を書く気分にはならずとも、見覚えのある筆跡が自由にコメントしている様を眺めるのはそれなりに愉快だ。そんな中、遠慮がちに揺れる短冊のひとつが目に止まる。



「室長に癒しあれ」


◯◯…ふざけたことを…。
独り言の声音は呆れていたが、頬は緩んでいた。笹から外し手元に残そうとでも思ったか、ノルベールは一瞬短冊に触れる。しかし、その手は引っ込め風に揺られるままにしておいた。


たくさんの短冊や人名に混じって
外れ者である自分の存在がそこにある。
誰かの手によって、願いを贈られている。


そんな光景も…なかなか悪くない。
ノルベールは咳払いのように小さな笑い声をあげ、ひっそり部屋へと戻るのであった。



名前:ティモ
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