(なんてこともあったっけ、懐かしい…)
(押し入れを整理していると、学生時代に使っていた制服や道具がいろいろ出てきた)
(初めて握ったクナイ、実習中に破けてしまった頭巾、渡せなかった恋文、テスト用紙の隅に赤筆で小さく書かれた土井先生からのメッセージ…)
(どれを見ても、昨日のことのように思い出せるいろんな場面)
(その全てに土井先生がいて、全力で恋をしていた記憶が蘇ってきた)
「片付けは終わったかい?
…まだみたいだな。
ああ、懐かしいね。君がくのたまだった時のか。
私もよく覚えているよ。
あの頃の君は、目の前のことに一所懸命で、真っ直ぐ前だけを見て突き進んでいた。
それが眩しかったんだ。そこに惹かれて…こうして一緒に暮らせるまできたんだ。
まだ実感が湧かない?
無理もないか。結納では大泣きだったからなぁ。
だが、いい加減に自覚してくれないと困るぞ。
君だってもう『
山田』なんだからな。」