(学園内を歩いていると、突然足元が柔らかく崩れ、そのまま下に落ちてしまった)
(誰かが落とし穴を掘っていたらしい)
(藁が敷いてあったので幸いにも怪我はしていないが、一人で登れそうな深さではない)
(どうしよう…)
綾「おやまあ。
保健委員の誰かかと思えば、事務員のおねえさんが落ちている」
(なんとも緊張感のない間延びした声に顔を上げると、踏鋤を担いだふわふわ髪の男の子が穴を覗き込んでいた)
(4年生の綾部喜八郎くんだ)
綾「どうですか?僕のターコちゃん14号の居心地は?」
(なんとなく察していたが、この落とし穴は彼の作品だったらしい)
(どう答えたものかと思案していると、遠くから別の声が近づいてきた)
滝「喜八郎?またこんなところに落とし穴を掘って…
ああっ!?あなたは!事務員のくないさん!!
このアホハチロー!人が通る場所に穴を掘るなと何度も言ってるだろう!!
すみませんくないさん!お怪我はありませんか?
今縄ばしごを持って参ります!この学年一優秀な平滝夜叉丸にお任せください!」
(綾部くんと同じ色の制服を着た綺麗な男の子が顔を覗かせた)
(同じクラスの平滝夜叉丸くんだ)
(彼は素早く状況を理解すると、隣にいる綾部くんの頭を小突き、いつもより自慢話短めで急いで縄ばしごを取りにいってくれた)
(いつも自慢話ばかりしている滝夜叉丸くんがまるでお母さんのようだ)
滝夜叉丸くん、ありがとう(ニッコリ)