(ケルシーが廊下の真ん中でコーヒーを飲みながら佇んでいる)
君か。
ふむ………
ドクター。
君はタイミングは気にした事はあるかね?
………そうか。
まぁ、君がどちらだとしても、別に構わないのだが。
だが、タイミングはとても大切だ。
いくら用意周到に準備をしていようと、タイミングがダメであればあらゆる準備が水泡に帰す事になる。挽回が不可能なほどに。
最悪、全てが全く逆…想定していた最悪以上の結果へと導いてしまう可能性すらある。
タイミングを見誤れば、な。もちろん逆もあり得る……
そう………例えば、だ。
とある男女が居たとしよう。男は少なからず女に対して恋慕の情を抱いていた。
しかし女は男の事を気に食わず、憎みこそしていないが好いてはおらず、どちらかと言えば嫌いだった。
男は様々なアプローチをしてきたものの、タイミングが悪く、全て裏目に出ていた。そのせいで女は男に好意を持つどころかより嫌っていった。
男は善人とまではいかないが、人も良く周囲の評判も悪くはなかった。ところがそれらすらも女には届かず、良い噂は女の疑心暗鬼を強め、悪い話は必要以上に男の評価を悪くした。
タイミングに失敗するとはそういう事だ。
ところがある日、とある事件がきっかけで女の男への評価は反転する事になる。
疑心暗鬼は強い信頼へ、嫌悪感は深い愛情へと変わった。
そう、タイミングさえ合えば底辺を突き抜けていようと全てをそのままひっくり返すことすら可能…ということだ。
タイミングの重要性を理解したか?
さて、ドクター…ここで1つ、君に問おう。
そこの角から向こうを覗いてみたまえ。
そっと、だぞ?
(気配を殺しながら覗き込んだ)
今日はクロージャの店で人気のアイスがようやく入荷したらしい。
予約しても軽く数ヶ月は待たねばならず、仮に入荷したとしても予約者全てに行き渡る事も無い、非常に貴重な物だそうだ。
食べた者の話では、味も非常に美味らしい。医療部でも入荷日が近付けば、頻繁に話題に上がっていた。
彼女も予約者の一人で、既に何度も抽選から落ちたそうだ。それが今回、やっと手にする事ができた……ところで見ての通りだ。
ちなみに件の商品だが、次の入荷は最低でも半年後、その上で入荷できるかは未定で、仮に入荷できても良くて数人分だそうだ。
更に1度獲得できた者は、公平を期すために抽選対象になる確率は低いとのこと。
その上、製品を作っているところが生産者の高齢化、後継者不足、材料費の高騰などの理由からあと何回出荷できるかもわからない状況らしい。
さて、勘の良い君ならもうわかるだろう?
なんとかしたまえ。
【RA】
名前:ススーロ
ドクターを61回休憩させた
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