「轟くん!」
放課後。
下駄箱で靴を履き替え、いざ帰ろうとしたらクラスメイトの女子に呼び止められた。
クラスメイトの女子は(なんて名前だったかな…忘れた…)頬を赤らめながもじもじしている。
手には小さい箱を持っていて…あ、嫌な予感がする…
「こ、これ!バレンタインチョコなの!轟くん良かったら受け取ってください!」
ずい、と目の前に出されるバレンタインチョコにげんなりする。
今日はバレンタインで、朝から女子も男子もそわそわしていて浮かれた奴らが多かった。
全く興味がない俺からしたらいつもと変わらない日だけど周りの女子は何故かそれを許してくれない。
頑張って作った、轟くんの為に作った、義理チョコだから貰ってほしい、実はずっと好きでした…色んな言葉と一緒に差し出してくるそれをいらないの一言で全部断った。
たいして話した事もなく(いやまあ俺が話す気ないから避けてるんだけど…)仲良くもない相手によくバレンタインチョコなんて渡せるなと思う。市販だろうが手作りだろうが知らない。いらない。鬱陶しい。
だって俺にとってはなんの役にも立たない、無価値で無意味なものだ。
食べたら炎に強い体になれるって言うなら喜んで食べるけど別にそんな事はない。
バレンタインチョコは朝に冬美ちゃんからもらったもので十分だ。
「あの…轟くんこれ…」
「悪いけどいらない」
早く帰って瀬古杜岳に行って個性訓練がしたい。
こんな所で時間を無駄に消費したくない。
クラスメイトの女子は何か話そうとしていたがそれを遮り、急いでるからとその場を後にした。
はあ…朝から疲れる…
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