『すごい月がきれい!』
「月…?」
○○ちゃんを家まで送る帰り道。
夜空を見上げてはしゃいだ声を上げる○○ちゃんの隣で同じように夜空を見上げた。
あー…そういえば今日は十五夜か。
冬美ちゃんはイベント事が好きで十五夜の日は俺、冬美ちゃん、夏くんで月見をしたっけな…
昔と変わらない、小さな子供みたいな表情で満月だね!と俺に笑いかける○○ちゃんにこんなのではしゃげるなんてガキだなと可愛くない返しをすると彼女はム…と少し頬を膨らませた。
その顔が可愛くて、思わずくつくつと笑うとばかにされたと思ったのか更に頬を膨らませた。
やっぱ○○ちゃんはどんな顔しても可愛いな…なんて思いながら頭を撫でてやると、小さい口からぷしゅーと空気を吐き、ニマニマと口を緩ませた。
あー…可愛い…
○○ちゃんは我慢しようにもにやけてしまう自分が恥ずかしいのか、顔に集まってきた熱を冷ますように両手で自分の頬を包むともう一度夜空…いや、月を見上げて今日は十五夜だねと言った。
月明かりに照らされた○○ちゃんの顔はどこか神秘的で…綺麗だなと思った。
『○○ちゃん』
名前を呼ぶと、月を映していた瞳は俺の方へと向けられた。
どうしたの動くその唇に触れるだけのキスをしてにこりと笑いかけると○○ちゃんの顔はあっという間に赤く染まった。
はは…耳まで赤くなってら…
赤くなった○○ちゃんが可愛くて、額や耳、頬を包む手にキスをすると眉が困ったように下がった。
嬉しいのに恥ずかしい、どうすればいいか分からなくていっぱいですって言いたげな顔だ。
「せっかくの十五夜だ、このまま帰るのは勿体ねえし月見でもするか?」
手を差し出して月見に誘うと、○○ちゃんは俺の手に自分の手を重ねた。
小さな手をぎゅっと握る。
『あのね…本当は今日、荼毘とお月見したかったんだ!
だから荼毘から言ってくれて嬉しい…』
えへへと笑いながら話す○○ちゃん。
……あー…今日多分…いや確実に家には帰せねえな…
そんな事を考えてる俺には気付かない○○ちゃんはコンビニでお団子買いに行く?なんて能天気な事を言った。