ジョルジュ「…オレはメニディ家という、まあアカネイアでは結構な名門の出でな。
オレの一族は、とりたてて武才も名声もなかった。
ただ、先を見通す目と、権謀術数だけは長けていた。
どちらにつけば勝ち馬に乗れるか、どうすれば相手の心をつかめるか…
アカネイア五大貴族にまで数えられるメニディ家の権力は、そうやって守られてきた。」
クリス 「……」
ジョルジュ「オレはそれが好きになれなかった。
やることなすこと全てが計算づく、他人を手のひらで転がすような…
そんな真似は不快だ。
もっと何者にも縛られない自由な生き方に憧れていた。」
クリス 「それで、ミディア殿とのお話を破談にさせたのですね…」
ジョルジュ「だが、奴らに言わせれば、オレもその血を引いているらしい。
お前に見抜かれたとおり、オレの根底には冷たい打算がある。
一族のような打算を嫌悪しながらも、その打算に頼らざるを得ない…それがオレだ。
部下を守り、ニーナ様を守る…そのための最善手を探すオレは…
人を駒としか見ていない。」
クリス 「ジョルジュ殿…教えてください。
先を見通せるあなたの目には、この戦争の結末はどう見えています?」
ジョルジュ「メニディ家の人間は勝者を間違えない。
勝つのはマルス王子だろうよ。」
クリス 「良かった…」
ジョルジュ「だが、それはお前が無事でいればの話だ。
クリス、お前は死ぬな。
時には逃げても構わん、だから…必ず生きのびて欲しい。」
クリス 「な、何故私にそこまで…?」
ジョルジュ「お前に好意を持っているから…といったら信じるか?」
クリス 「い、いいえ、ジョルジュ殿のことですから、何かきっとお考えが…」
ジョルジュ「……。そうだな。これもしょせんは打算だ。
理由は好きに思っておけ。
だが理由はともかく、お前には生きていて欲しい…
そう考えている人間がここに一人いることは憶えておいてくれ。」
クリス 「ジョルジュ殿…」
ジョルジュとクリス3