(皆が外出している時間帯を狙い、最低限のお金と荷物を持って部屋を出る)
(色々と心残りはあるけれど、今日を逃したらもう二度とチャンスは巡ってこない)
(俯かせていた顔を上げ視界に映ったのは、奥へと続く廊下と明るく照らされた階段)
(左手には小さな街明かり、そして右手にはツキの部屋の扉…)
(皆との思い出が、まるで現実で起こっているかのように映し出される)
(けれど行かなければならない)
(己を律するように、フ、っと短く息を吐いた)
(階段を下りきり、そして玄関の重い扉を開ける)
(天気はおおむね快晴。雲は海の方に少しだけ)
(時折吹く季節外れの冷たい風が、頬をひどく凍てつかせた)
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