(がやがやと賑わう一本道を歩いていたつもりだった)
(けれどいつの間にか周りには木々が生い茂り、精霊のような何かが飛び交っている)
(木の陰で一層暗くなった辺りを見回し、帰れないのではと恐怖心が増す)
(さすがに引き返そうと後ろを振り返る)
(いた)
(自分と同じような狐の面を被った何かがそこに居た)
(思わず声を上げ後ろに倒れ尻もちをついてしまう)
(悪い妖であればここで取り殺されてしまうだろう)
(白く浮かび上がる白い面がこちらに近寄り、手の届く距離で止まる)
(さあさあと風に吹かれ柳の葉が擦れる音がする)
(本当に終わりだ、そう思い目を瞑る)
…迷子?
(優しい声色に少しずつ目を開く)
(目の前の妖?は、私たちと同じように人型で耳としっぽを蓄えていた)
がこんなところに居るなんて珍しいね。
普通は…ううん。何でもない。
(大丈夫?と手を出されたので素直に手を重ねる)
(立ち上がり土埃を払うと、目の前の妖?が息を呑んだ)
、…それ、ユラの面…。
(首にかけていた面がよほど気になったのだろうか)
(しばらく無言で見つめられ、思わず声をかけてしまう)
…ごめんなさい。今は助けられない。
でもきっと機会が訪れるから、その時に。
館はこっち…ついてきて。
(意味深な言葉に引っかかりながらも、案内に従いついていくことにした)
(悪い妖であればよくないのかもしれないが、そうであればとっくに殺されているはず)
(しばらくついていくと、木の隙間から特徴的な赤い色が見えた)
(館だ!)
(感謝を伝えるため後ろを振り向く)
(けれど先ほどの妖?はどこにもいなかった)
(精霊か何かの気まぐれだったのだろうか?)
(しかし悩んでも答えは出ない)
(森を抜け館にたどり着くと、安心したせいなのかこの日の出来事を思い出すことは無かった)
(あの日までは)