(ここ数日ツキや皆…特にユラが信じられなくなった)
(記憶は無いのに感情だけかすかに残っている)
(そんな不快感がたまらなく気持ち悪かった)
(皆が寝静まった頃を見計らい部屋を出る)
(この日はユラが不在で、だからこそ決行を決めたのに)
(どうして目の前にユラが居るのだろう)
…"また"家出かい?
(初めての家出に、またも何もない)
(やはり使われている。彼の所有物である鷽替えを)
(そうでなければ何者かに惨殺されたような不快感が残っているはずがない)
(この場の回避方法など思いつかないが、できるだけユラの口から言葉を引き出さねばならない)
("今"は必ず"戻される")
(ならば"戻された自分"に託すため、ほんの少しでも手がかりを聞き出すべきだ)
(ユラの妖艶な表情を睨みつけ、少しだけ後ろに下がる)
…ああ、足りなかったのか。
君への負担を考慮しすぎたようだ。
仕方ない。もう少し戻ろうか…。
(彼の手には鷽替え、そして戻るという言葉)
(視界が酷く歪みあと少しで意識を手放してしまうのだろう)
(次こそは、思い出せるように)
(……)