(善良な妖を使役し、人々に禍をもたらす悪しき魔物を退治する)
(それが先祖代々伝わる家業であり、血を引く者の宿命…)

(現役の術者である祖母に連れられてきたのは、家の裏に広がる雑木林)
(季節は夏の盛り。うだるような暑さの中、金属を削っているような甲高く耳障りな音の中にツクツクという繊細な音が混じる)
(竹林にしか生息しないというセミの羽音は、高まりつつあった緊張を少しばかり紛らわしてくれた)

(今日は術者になるための課程を修了し、初めて使役獣の召喚に挑む日だ)
(祖母は初めての召喚で龍の子を、そして母は若い麒麟を呼び出したと聞く)
(程なくして木々の開けた場所にやってきて、こちらから距離を置いた祖母がコクリと頷く)
(あまり自信はないけれど、ご先祖様に恥じることのない妖を使役してみせる――!)
(……!)
(呪文を唱え終えるとまばゆい光が視界いっぱいに広がった)
(一体どんな妖が応えてくれたのだろう…)
(期待と不安を胸に、光が弱まったのを確認し恐る恐る瞼を持ち上げた)


(……)

??:やっと会えたね。今日この日をずっと待ちわびていたよ。

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