陽の光が差すことのない異界"常夜"
ここではさまざまな妖が人の真似事をし呑気に暮らしを営んでいる
水売りの河童はきゅうりしか売らぬというし
薬屋のカマイタチは傷害事件ばかり引き起こす
提灯屋の一つ目小僧なんかは商品である提灯に逃げられたのだとか
等々、等々…
そんな自由気ままな彼らのもっぱらの噂は"狐ヶ崎様"だ
森の終わり、断崖絶壁にそびえ立つ赤黒く大きな館
館の主である妖狐"ユラ"は願いをなんでも一つだけ叶えてくれるという
だが願ったが最期、二度と月夜の下を歩けない
なぜならば願いの代償は彼と彼の仲間の好物である肝臓なのだから
下々の話を聞き終え、乙女は意を決して森の入り口へと足を進める
彼女の抱える問題は、噂話に縋るほど深刻で急を要するものだったのだ
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