……。

(卯の刻(午前五時)前。目を覚ましたセイが体を起こし立ち上がり、皺の寄ったシーツを広げ整える)
(脱いだ寝巻きを慣れた手つきで畳み、枕の隣に並べ置く)
(体術用の服を纏いながら、昨日手入れをしたばかりの暗器を定位置に隠していく)
(とっさの際には位置ずれや場所間違いが命取りとなる。一つずつ、状態の確認は怠らない)

(そしてすべての暗器を仕込んだのち、机の引き出しからブラシを取り出し、前に持ってきた大きく太い尻尾をブラッシングする)
(大量の抜け毛が落ちるが、いつものことなのでさして気にする様子は無い)
(ふわふわの毛玉を作り二、三回モフった後ゴミ箱へといざなう)

……。

(身なりを整えた後、場所を確保して伸脚を始める)
(修行の前に体を整える。それが彼のやり方だ)

(本気の準備運動により額に汗がにじみ出してきたころ、それは聞こえてきた)

……、…。

(隣部屋からの微かな音に、前屈をしながらも耳だけ傾ける)
(日頃花のような笑顔を浮かべる彼女の、妄想を膨らませるような寝言)
(ひときわ大きな声が聞こえてきて驚いたセイは、後屈をした際そのまま後ろへと倒れてしまった)

(ボフッ)

……。

(幸いベッドがあったため事なきを得たが、彼の脳内はそれどころではない)

…走るか。

(上着を椅子の背もたれにかけ、寝静まった館の外へと出て行った)