(玄関扉が開く音がして広間から小走りで向かうと、そこには偵察から戻ってきたのだろうセイが居た)
(しかしその右腕には赤く変色したさらしが巻かれており、心なしか顔色も悪く見える)
(慌てて医療箱を取りに行こうと踵を返すも、冷静な彼の声に呼び止められた)
新入り、待ってくれ。…驚かせて悪かった。
この程度の傷ならば利き腕でなくとも処置できる。お前の手を煩わせるには及ばない。
(そうは言うものの怪我の様子を見ないことには安心などできない)
(彼の手を取り広間まで連れ込むと問答無用でソファに座らせた)
(最初の方こそ目で訴えてはいたものの、観念したのか自らさらしの結び目に手をかける)
(…傷口は鋭利な刃物で切り取られたかのようにぱっくりと口を開いていた)
ほんの少し矢が掠めただけだったが…敵は毒使い。万が一を考え皮膚を切り取った。
症状が現れていないところを見ると、処置が間に合ったか、もしくは最初から毒など塗られていなかったのだろう。
…すまない。先に忠告すべきだったか。
(セイはこちらを安心させるためなのだろう。左手を持ち上げ優しく頬に触れる)
(彼に限らず館の外では皆命がけなのだということを改めて痛感した)