(今日は行事の前日だからか、街はいつも以上の賑わいを見せていた)
(どの店も特売やセット商品の販売など力を入れているらしく、特に女性の通行客が多く目立つ)

…今日はやけに混んでいるな。
一度はぐれてしまえば探すのも一苦労だろう。

(彼は真顔のまま冷静に呟き、こちらの手を取り指を絡めてきた)
(それと同時に前方から黄色い声が聞こえてきたので目を向けると、明らかにセイに心を奪われている女妖たちがこちらを凝視し話をしていた)
(勘違いされているだろうなと思いつつも、いちいち訂正していたらキリがない)
(気持ちを切り替え前を向くと、後ろの方でカランカランと景気の良いハンドベルの音が聞こえてきた)
(どうやら今から数量限定のタイムセールが実施されるようだ)
(店側も本気だなぁと考えていると、鐘の音を聞きつけてやってきた通行客たちが鼻息を荒くしながらこちらに向かってやってきた)

……(ぎゅ、)

(どう避けようかとシミュレーションしていると、不意に肩を抱かれ彼の方へと引き寄せられた)
(大量の視線がこちらに注がれ、女性たちは「まあ」だの「ヒャッ」だの、先ほどの女妖たち同様甲高い声をあげる)
(肩を寄せた彼の手には、正面からでは見えない位置に小刀が握られているが…)
(しかしこの容姿端麗な男が彼氏に見えているのだと思うと気分が良い)
(彼の背中に腕を回し、無駄に勝ち誇った笑みを浮かべながら海割りのど真ん中を闊歩した)(※ただし付き合っていません)