……、…。

(彼にとってあまりにも唐突で衝撃的な提案だったのだろう)
(一度は唇を震わせたものの、言葉を漏らすことなく再び口を噤んでしまった)
(こちらに注がれる視線は少しばかり緊張をはらんでいるようにも見える)
(それでも目が合い続けているのは、言動に感情が現れにくい彼がこちらのことを真剣に考えている唯一の証だった)

…今すぐにというわけではないのだろう。
ならば口約束など意味をなさない。その時にならなければ、決心がつくはずもない。

(セイらしい誠実な答えに無意識に溜め込んでいた吐息を漏らす)
(どちらかというと否定的な返事だったかもしれないが、検討の余地を残してくれただけでも十分だった)