おっと、今日が誕生日だったのか?
前々から催促されていたとはいえ、肝心要の日にちを聞き忘れていた。

…が、贈り物は既に手元にある。何の支障もない。
誕生日おめでとう、お嬢。
いくつになったかは分からないが、確実に一つ歳を取ったお嬢もまた一段と美しい。
この一年…いや、この先ずっとお嬢にとって素晴らしいものであることを願っている。
ご用意致しましたものはささやかではありますが、受け取ってくれますか?

(彼は目の前で膝を折り、どこからか取り出した布の端を丁寧に広げていく)
(そして露わになったのは…以前彼が提案してくれた腕輪だった)
(彼を思わせる色合いではないものの、同じ編み方だと気付くのにそう時間はかからなかった)
(感謝の言葉を伝えたのち、さっそくはめてみようと腕輪へと手を伸ばす)


……、

(…?)

いや、すまない。俺としたことがお嬢の手を煩わせようとは。
不躾ながらお手を拝借いたします。…思わず見とれてしまうほど、すべらかで綺麗な手だ。

(親指が手の甲を撫でつけ、くすぐったさのあまり思わず彼の手の内を掻く)
(そんな不慣れな様子が面白かったのか、彼は上目遣いのまま目を細め口角を上げる)
(少し恥ずかしいけれど、幸せとは今この瞬間を指すのだろう)
(この先ずっと肌身離さず着けていよう。絶対に失くさないようにしよう)
(そう心に誓いながら、腕輪がつけ終わるのを眺めていた)
(……)






(……)


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