そうだな…一番楽しかったのは、あの方…ユラ様を怒らせようと悪戯ばかりしていた頃かな。
館に連れてこられた当初は、常に優しいユラ様の化けの皮を剥がしたかったんだよね。
犬神を拾うだなんて、呪いたい奴が居るからに決まっていると思っていたから。
綺麗ごとを言うたびに茶々を入れたり、勉強をサボってみたり、修復可能な範囲で部屋をぐちゃぐちゃにしてみせたり。

…でもあの方は全然怒らなかった。
怒るっていう感情が無いのかというくらい、言葉にも、表情にも苛立ちを見せなかった。
ただ以前僕のあげた、何の変哲も無いただの棒きれを隠したときは…ちょっと悲しんでたかな。
僕からの初めてのプレゼントだったから大切にしていたんだって。
……どうして置いていったんだろう。死ぬなら一緒に死にたかったのに。

私はシユが生きていてくれて、出会えてよかったよ
シユにそこまで言ってもらえる素敵なユラ様会ってみたかったな
…そうだよね。大切なものが消えてしまう時が来たら、自分も一緒に消えてしまいたいよね