(月の光を頼りに下山すると、以前より物寂しげに見える廃小屋が見えてきた)
(外から明かりを確認することはできないが、いつもなら扉の内側に彼が立っているはず)

(……?)
(立て付けの悪い戸を引くも、彼の姿もなければ灯りも消えている)
(シユ、と声をかけるが、聞こえるのは木々のざわめきと虫の声だけ)
(服の中から顔を出した偽尻尾もきょろきょろと頭を振っている)
(何か用事でもあって来られなかったのかもしれない)
(長らく日を開けた後ろめたさもあり、今日のところは館に帰ることにした)