……。

(今日のシユは顔を合わせてすぐに機嫌が悪いと気付いた)
(こちらから話しかければ一応返事はある)
(けれど返ってくる言葉は全て素っ気なく、目も合わせようとしないから実際聞いているのかは定かじゃない)
(どうしたものかと考えあぐねていると、彼が深く長いため息をついた)
(君は何も分かってない。そう言われたような気分にさせられた)

…ねえ、君って好色家なの?

(予想だにしない質問に思わずえ?と声が漏れる)
(興味半分で皆にちょっかいを出すことはあっても、誰とも交わった記憶はない)
(違うと思う…と曖昧な返事をすると、彼は再び溜息混じりに言葉を紡ぐ)

まあそういう返事になるよね。覚えてないんだから。

(何を覚えていないというのだろう)
(彼の言葉の意図が読み取れないながらも、妬いているのだろうかと思い彼に寄り添う)
(予想は外れていたわけではないようで、彼の頭が甘えるように肩へと凭れ掛かってきた)

…くぅん。

(切ないような鳴き真似をし首筋に埋まった彼の柔らかな頭を、出来る限り優しく撫でさする)
(とりあえず今日はたくさん甘えさせてみよう)
(少し過激なことをされなくもなかったけれど、帰り際にはいつものシユに戻っていたので良しとしよう…)