(珍萬楼の方で休みが取れたというクイに連れられ、朝食後彼の家へと向かう)
(方角的には華やかな西側ではあるけれど、裏路地を進みに進みまくって辿り着いたのは、両側の家の支え無しではすぐに崩れてしまいそうな長屋街だった)
(大丈夫かと言わんばかりの表情をこちらに向けるクイに、期待の意味を込めて彼の腕に抱き付く)
(すぐにそっぽを向いてしまったが、間際の顔の赤らみは見逃さなかった)
…着いたぞ。
(目の前にあるトタン造りの平屋は、褒め言葉が浮かばないほど寂れていた)
(ただ中は一度リフォームでもしたのか、雨漏りがしそうな雰囲気はなかった)
(六畳ほどのリビングを通って、奥にある扉の前に立つ)
お袋、今いいか。
(こちらの腕を振りほどき咳ばらいをしたクイは、扉の向こう側に居る者へと声をかける)
(中から聞こえてきた「あいよ」という明るい声に、期待と不安とが入り混じる)
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