(オミに何気なくジユの話を
振っただけなのに、なぜこうもこじれてしまったのか)
(道の真ん中で喧嘩別れをしてから早半刻、胸の苦しさと焦りとで目の前のガトーショコラが喉を通らない)
(せっかくお洒落なお店に連れてきてくれたジユには悪いが、すぐにでもオミの元へ戻りたかった)
…いや、今はまだその時じゃない。
どうしてもと言うのなら、もちろん俺に引き留める権限はない。
だがアイツが自身の行動を振り返り反省しない限り、今後もまた同じことを繰り返すだけだ。
そもそもお嬢は謝らなければならないほどのことをしたのか?
失言や失敗は誰にでもある。生まれたばかりの阿紫霊狐であればなおさらだ。
それに相手の過失に一々腹を立てるような奴はおとなじゃあない。
今まではお嬢が毎回引いてやっていたんだろうが、それじゃいつまで経っても傷付けられるばかりだ。
今後アイツと良好な関係を続けたいのなら、これを機に今までいかにアイツがお嬢に甘えてきたのかを思い知らせた方がいい。
(ジユはきっとこちらのことを真剣に考えている)
(だからこそ悪役を買って出てまで引き留めようとしてくれているのだろう)
(彼の言葉を否定することが出来ず、ただただ時間ばかりが過ぎようとしていた)
じゃあ明日行ってみようかな…アドバイスしてくれるジユたん…優しいです…ありがとう…