(山のイチョウが日に日に色づく中、今日もまたオミの店へと足を運ぶ)
(半刻かかる道のりは小さな秋探しで心が弾み、あっという間に街へとたどり着く)
(ひんやりとした朝の空気は他の妖にも堪えるようで、各々厚手の服を身にまとっている)
(深い赤色や橙色の花が多くなった花屋の角を曲がり、饅頭屋の温かな白い湯気をあえて浴びにいく)
(唾液を飲み込みしばらくすると、見慣れたのれんが秋風に揺られているのが見えた)
(今朝も寒い寒いと文句を言いながら、店頭に物を移動させたり落ち葉の掃除をしていたのだろう)
(自然と顔が綻ぶのを感じながら、古びたガラス引き戸に手をかけ店内を覗く)
(しかしそこに目立つ髪色の男はおらず、代わりに…)