グラス<(―――トレーナーさん。初めて会った時は、たくさんいるトレーナーの内の一人という認識でした。
ですが、私があの人に興味を抱いたのは、あのスズカさんがベテランのトレーナーから、わざわざ新人トレーナーのあの人の元へ移籍した事。そして、スペちゃんが話す話題にスズカさんだけでなくトレーナーさんも多く出てきた事がきっかけでした。
そして……あの日…)
『選抜レース、2着だったのが不満なのか?』グラス(トレーナーさんは私のトレーナーではない。ましてやエルやスペちゃんみたいに私の性格を良く知っている訳でもないのに。
……なのに、あの人は誰にも気づかれなかった私の心の内をいとも簡単に見つけてしまった。見つけてくれた。瞳に闘志が燃えていたように見えた、なんて理由で。
―――我ながら単純だと思うが、きっとあの時に私の心は定まってしまった。あの人となら私は強くなれる。トレーナーさんとなら、頂点への道を…最後まで共に歩んでいけると。

……でも、その願いは叶わない。なぜなら、あの人はもうスズカさんの専属トレーナーだ。少なくともその契約が終わる時まで、あの人が私のトレーナーになる事はない。)
―――――ならば。
グラス回想1