そのとき背後でとてつもない音がした。いや、単に音がしたなどという生易しいものではなかった。

それは西海岸に住む者なら誰もが「いつか来るでかいやつ」と恐れるあの巨大地震がついに来たのかと思わせるほどの圧倒的な音量で炸裂した。

そして音そのものがまるでコミックブックに出てくる大げさな擬音の書き文字のような存在感を持って背中にぶち当たり、打ちのめし、
気がつけば私は埃っぽい床に額をこすりつけたまま伸びていたのだった。


一体どのくらい気を失っていたのだろうか。

世界を覆いつくす大惨事の予感から最早どうとでもなれという諦めに囚われかけた刹那、
しばらく前に買出しに出たまま戻らない妻と幼い娘の顔が私の心をよぎった。

その顔は、娘を抱いた妻がポンコツのビュイックに乗り込む直前、あなたは疲れているんだから家で休んでいなさいと言って譲らなかったときの

――そのときの妻の顔は眩いばかりの春の陽光に金色に縁取られてまるで世界中のあらゆるものを祝福しているかのように見えた――

どこかいたずらっぽい小娘めいた笑顔だった。


私はまだくらくらする頭を抱えながらゆっくりと立ち上がり、
何事もなかったかのように静まり返った部屋の中央で馬鹿のように突っ立ったまましばらく考えた。

そしてようやく先ほど背後から聞こえた凄まじい音の正体が、自分のひり出した屁に過ぎないことに思い至った。







元ネタ?知りませんよ?