「走り屋」なんて言葉が現役だった頃の話。
県南の某峠深夜3時。
いつもは数台の常連が腕を競っていたが、
平日の深夜、霧が出ていた事もあって
走っていたのは俺一人。
気分良く周回していたら、
一つのコーナーのガードレール外で手を振っている人が。
「ブラインド側から対向車が来るのか?」
とスピードを落とし
軽く手を挙げて礼をしながら通るも
対向車は来ない。
次の周も同じ様に手を振ってる。
「バカにしてんのか?」
次の周にとっちめてやろうとして
スピードを上げる。
同じ様に手を振るそいつに
脅しを兼ねて猛スピードで突っ込む。
その瞬間、
あることに気づいて全力でブレーキをかける。
道端の献花の上に立ち
ニヤニヤと嗤うそいつは
手を振っていたんじゃない手招きをしていたんだ
ガードレールの向こうから