(…やはり、信じられない)
(聞川真の話はあまりにも荒唐無稽だ。記憶喪失などとは訳の違う現実離れしたそんな話を信じられるわけがない)
(…だが、それを面と向かって彼に言うのはさすがに気が引けた)
(自分自身にはさすがにまだそんな感情は芽生えていないが、聞川真と◯◯は確かに友達同士だったのだろうから)
(だから、本音を嘘で隠した)
(そうだったんだ、大変だったんだねと。人を信じられないなんて辛かったねと。過去の自分が信じていたなら、自分をそれを信じたいと)
(そんなことを語った)
(ーーだが)
(聞川真のこちらを見る目は、ひどく悲しげなものだった。まるでそれはこちらの心の内を透かし見ているようで、背筋を嫌な汗が伝うのを感じる)
(慌てて言葉を重ねようとするが、それよりも早く聞川真が静かに口を開いた)
…うん、ありがとう。
けど、いいんだよ。無理はしなくて。
……いいんだよ。
(分かっている)
(彼は、分かっている)
(本能的にそう思った)
(だが今更どうしようもない。覆水は盆には返らない。自分の本音は聞川真に聞かれてしまったのだと、理解をしたのである)
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