(記憶を失った自分が色々あって聞川真と会う約束を取りつけ、やがて訪れた約束の日。聞川真の家を訪れ、玄関で「初めて」彼と顔を合わせた)
…あの、久しぶり…
怪我の痕とか、残ったりしてないか?
(気遣わしげにこちらを見る聞川真…と思われる人物。彼が名乗っていないから断定までは出来ないのだが、恐らくは聞川真本人で間違いないのだろう)
(それにしても怪我の痕、か)
(事故自体は大したことなかったとはいえ、さすがにまだ痕は完全に消えてはいなかった。が、医者にもいずれ消えると言われているし、そう大袈裟なものでもない。変に彼を心配させるのもどうかという思考から、自分はこう言ったのだ)
(怪我の痕は残っていない、と。初めて聞川真の前で口を開いた)
(途端、だった)

(ヒュッと聞川真が鋭く息を吸った。かと思えばその顔からみるみる内に色が抜けていく)
(あまりの急変っぷりに驚き、大丈夫かと咄嗟に問いかける)
(が、聞川真は大きく体を震わせて、こちらから一歩距離を取ったのである)
…◯◯…?
(信じられない、というような目がこちらを真っ直ぐに見据えてくる)
(まるで状況が分からなかった。なぜ聞川真がこうも動揺しているのか。なぜ聞川真がこうもーー怯えているのか)
(困惑しながらも一体どうしたのだというようなことを、なるべくそっと問い掛けてみる。理由は定かではないが、何故か激しく動揺している聞川真をこれ以上刺激しないようにしなければならないという思いからだった)
……っ
……

…ごめん、あの…
一先ず中に入って。
俺はお茶でも入れてくるからお前は先に…
…廊下真っ直ぐ進んだ先、突き当たりの部屋の手前が俺の部屋だから…先に中に入って待っててくれ…
(そう言って聞川真はぎこちなさを感じる足取りで立ち去ってしまった)
(何が何だかまるで分からないが、とりあえず聞川真の指示に従って部屋に移動したのである)
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