(真が人との対話を避けるようになったことに周囲が気付くのは、存外早かった)
(まず初めに気付いたのは一緒に暮らしている母親だ。が、声を掛けようとするなりすぐさま距離を取る真の態度から彼女なりに何かを察したのか、彼女は過干渉はせず黙って見守る姿勢をとった)
(次に気付いたのは中学以来の友達。真にとっては親友ともいえる存在だった)
「最近さ、なんか様子おかしくねえか?どうした?」
(問われたその言葉に嘘はなかった)
(病院で原因不明の判断を下される以前から、真は自分の症状を正確にーー心の声が聞こえるのだと誰かに打ち明けたことはなかった。ただ1人、抱え続けていた)
(そんな状況に会話に伴う精神的な負荷が加わったことで、真は自分でも思っている以上に疲れ果てていたのだ)
(ゆえに嘘のない友達の言葉を受けてひどく安心したことで肩の力が抜けーー気付けば自身の置かれた状況について打ち明けていた)
(そしてその時の選択を後悔したのである)
「そう、なのか。大変だったんだな…」
(ーー嘘だった)
(さも心配したような顔で真を気遣うような声で紡いだその言葉は、嘘でしかなかったのだ)
(その日以来、彼の世界はひとつ、小さくなった)
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