(逃げ帰った自分の部屋の中。ドアに背中を預けるかたちで腰を落としたまま、次から次へと熱いものが溢れてくる目元を真は拭い続ける)
(そうしながらも頭の中で響き続けるのはさっき聞いてしまった、嘘で塗り固めてまで隠そうとした母親の偽りなき本音だ)
(病気。ーーそう、病気だ。自分はおかしい)
(脳が異常を起こしてるのか、それともーー精神の病か。いずれかはわからないが、とにかく今の自分が常軌を逸していることに間違いはないのだ)
(ちょうどいいから調べて貰えばいいじゃないか。妙に冷静な頭の一部がそう声を上げる)
(真自身、なんとなく考えていたことでもあるのだ。病院にいった方がいいんじゃないかと。もう一度、今度は違う科で調べてもらった方がいいんじゃないか、と)
(そうやって調べてもらって何でも良いからもっともらしい病名をつけてもらって。そしたら安心できるかもしれないから、と)
(そう、安心できる。そのはずだった)
(だけど今、真は病名をつけられることも、また反対につけられないことも怖かった。それはいずれにしたって自分がおかしいということの裏打ちにしかなりようがないからだ)
(病院にも行けない。けど引きこもってるのも良くない。じゃあ自分はどうすれば?)
(そんな疑問に冷静な部分が答える。そんなの決まってる、と)
(自分がすべきは普通に学校に行って、普通に過ごすこと。それだけだ。そうすれば少なくとも母親は安心するだろうし、相談を受けてた電話の向こうの父親だってそうだろう)
(そんなことは言われるまでもなく分かっているのだ)
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