(多少荒療治でも繰り返し外に連れ出しているうち、外に対する恐怖心も薄れるんじゃ)
(そんな考えから真の腕を取り、訳も話さずにそのまま玄関へと向かった)
(始めこそ戸惑った様子ながらも素直についてきていた真だが、玄関が視界に入りそれが段々と近づいてきた事で状況を理解したようだ。背後で急にブレーキがかかり、つられてこちらの足も止まってしまう)
(振り返れば、真っ青な顔をした真がこちらを見つめていた)

な、なにっ、なにしようと、してるんだよお前…
(動揺は露骨に声に出ていた。掴んだ腕からも微かな震えが伝わってくる)
(だがそれには答えず再び前を向き、先に進もうと足に力を込めた。なんとか外へ彼を連れ出すのだという使命感にも似た物が胸の内で燃えていた)
(だがーー)
やめ、ろっやだ、嫌だ…やめ…っ、
ーー止めろよ!
(渾身の力を込めたのだろうか。悲鳴にも近い声が響くと同時に振り払われた手に、じんとした痺れが走る)
(真の顔を見る。肩で大きく息を繰り返しながら、彼もこちらを見ていた)
(怒っているのか、それとも悲しんでいるのか。よくは分からない。ただ彼が今にも泣き出しそうな顔をしていることだけは確かだった)

……っ
(真は下唇を噛み締め、無言で踵を返す。その足は家の奥へ、たった今来た道を引き返すように動いていた)
(咄嗟に後を追う。真は振り返らない)
(一足先に部屋についた真の行動は早かった。置きっぱなしにしていたこちらの荷物を手にすぐさま戻ってきたかと思うと、それを差し出してきた。反射的に受け取る)
…ごめん。
今日は、帰って。
俺、いま、そんなに冷静じゃない。
玄関の鍵は開けたままでいいから。
…帰って、くれ。
(何かを押し殺したような低い声でそう言って、真はこちらの返事も待たずに背を向けて部屋の中へと消えてしまう。目の前でドアが閉まり、自分しかいない廊下に施錠音が重く響いた)
廊下に正座して待つ