(こちらにとっては運悪く真にとっては運良く、家には誰もいなかった)

(寝具の上に転がって大きく息を吐きだす。先ほどよりも更に熱が上がっているような気がした)

…◯◯、悪いけど冷蔵庫開けるからな。せめて飲み物は近くにあった方がいいと思うし。
それと、風邪薬とかどこにあるか分かるか?

(熱で頭が回らないせいか、どこにあったかピンとこない)

(家族に確認してみると一言断り、ふわふわと覚束ない指先で連絡を入れてみる)

(返事は、真が冷蔵庫から清涼飲料水の入ったペットボトルを手に戻ってくるのとほぼ同じタイミングで返ってきた)

(切れてるから買って帰る。あと30分もあれば戻る、と。だいたいそんな内容だった)

30分…

(真にもその内容を共有したところ露骨に表情が強張るのが見てとれた。やはり、怖いのだろう)

(……)

(真の名前を呼ぶ。ハッとしたようにこちらを見た彼に笑いかけ、伝える)

(まずは感謝と謝罪を。それからーーもう1人でも大丈夫だから、真は帰っても良いのだ、ということを)

……◯◯、

(…本当は、嘘だ)

(病気の時は人恋しくなるというのは本当のようで、我儘が許されるのであれば真にはギリギリまで傍に居て欲しいと思っている)

(だけどそれは真がうちの家族と遭遇するリスクが上がる行為だ。ただでさえ無理をさせてしまっているのに、そんな危ない橋を渡らせるわけにはいかない。そこまではさせられない)

……

(真は黙り込んでいる…迷っているのだろうか?迷って、くれているのだろうか?)

(だとしたら、これほど嬉しいこともない)

……、
もう少し

(……?)

…もう少しだけ、いるよ。
30分くらいなんだろ?帰ってくるにしても。

だったら、あと少しくらいはいる。
お前の傍にいるよ。

(そう言って真はこちらの汗ばんだ額に手を当てて、ほんのりと微笑んだ)

(それはいつもに比べてどこかぎこちなさのある笑みではあったけれど、今の自分にとってはとても頼もしく映った)
君の為に、もっと頑張る