…今日はありがとうございました。
あいつの現状知れて、ホッとしました。
(店を出て、自転車を押す田中と並んで歩く。彼は何度目かもわからないお礼の言葉を口にした)
……あの、◯◯サン
こんなこと俺が頼むのもおかしいし、図々しいんすけど…あいつのこと、よろしくお願いします
あいつひとりにしたら…多分ドツボにハマっちゃうと思うんで。根がネガティブっすから
(言われるまでもないことだ。任せておけ、という意思を込め頷いてみせる)
…へへっ、良かった。
…それと図々しいついでに、も一個お願いなんすけど…

今日俺に会ったこと、てか俺が家の前にいたこと、あいつに黙っててくれません?
(どういう、ことだろう)
(田中をじっと見つめると、彼は頬を掻きながら居心地悪そうにこちらから視線を逸らした)
…ほら、◯◯サンの話じゃ、今あいつ随分精神的に落ち着いてるみたいっしょ?
余計な波風立てたくないんすよ。
…いっぺん、どん底かそれに近い状態、見ちゃってるんで
(そこで田中は自転車を止め、スタンドを立てる。改めてこちらに向き合うと、がばりと頭を下げた)
だからその、勝手言ってんのは分かってるんすけど、お願いします…!
(…どうも彼は存外真面目な人間らしい。かつ真のことを本当に心配しているようだ)
(二人の間に何があったのか。詳細はまるで知らないが、少なくとも今はまだ自分が首を突っ込むべき問題ではないことはわかった。多分彼にも真にも、心の準備ができてはいない)
(頷くと、田中は表情をパッと明るくさせて「助かります」と息をついた)
(その後、何かあればと一応連絡先を交換し、田中とは別れたのである)
数日後