(田中の親友である聞川真。いつか話をしてみたいと思っていた相手)
(けれどそれは聞川真本人への純粋な興味というより、田中の親友だったからだ。自分以外彼の懐に入り込んでいる人物だと知ったからこそ、話をしてみたかった。話をすることで、田中の違う一面を知ることができるかもしれないという浅ましい欲もあったのかもしれない)
(だからそう深い意味もなく、安易な気持ちで田中に話をしたのだ。聞川真ともいつか話をしてみたいと)
(そして今日、自分と彼は知り合った)
(それはいいのだ。いつか話をしてみたいと思っていたのは事実なのだから)
(けれど問題なのは、事あるごとに田中が自分と聞川真の間を取り持とうとしてくることだった)
(それは少なくとも自分と聞川真が付き合うことを…そうでなくても自分の気持ちが聞川真に移ることを望んでいるような。そう思わせるには十分すぎるほど露骨な行動だった)
(多分、だけど。それは彼なりの優しさだったのだと思う)
(いつまでも自分に対し報われない想いを抱いている幼馴染みを解放したい。けれど今の関係を壊さずに何とかすることは自分では難しい、だからこそ心から信頼している親友になんとか託したい。そのような気持ちが恐らくは心のどこかにあったのだと思う)
(だからこそ、あえて行動も露骨にしたのではないか。俺のことは諦めろ、こいつはいい奴だからこっちにしろ。そんな思いをこちらへと伝える為に)
(事実、聞川真はとてもいい人だった。優しく穏やかで、もし田中と出会う前に彼と出会っていたとしたら恋に落ちていてもおかしくはない。そう思うには十分な相手だった)
(でも、だけど、)
(いくらなんでも、これはあんまりじゃないか)
(確かに自分の想いは不毛なのかもしれない。だけど、想い続けることくらい許して欲しかった。たとえそれが優しさからの行動であったのだとしても、今の自分にとってはあまりにも辛かった)
(そこでようやく分かったのだ。自分はやはり幼馴染みとしてではない、一人の女の子として、彼の傍にいたかったのだと。幼馴染みとしての一番でいいなんて、綺麗事に過ぎなかったのだと)
(それどその願いは、絶対に叶うことはない)
(絶対に)
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