(とある日の帰宅時のことである)

(いつもの帰り道。夕日も落ちて、すっかり薄暗くなった道をひとり歩いていると、前方に何やらおかしなものを見つけた)

(夕日よりは遥かに小さくてか弱いオレンジ色の光。ぼんやりと光るそれによって照らされているフードを目深に被った人間…のようなものだ)

(遠目からでは男性とも女性ともつかないその人物。よくよく見れば彼もしくは彼女は道の端に広げたレジャーシートの上に座っているようだ。そしてシートの上にはその人物だけでなく、何やら細々としたものが並べられていることにも同時に気付く)

(この一角だけを切り取った上で好意的に解釈するならフリーマーケットのような体裁ではあるのだが、いかんせん場所と時間と格好が悪すぎる)

(なぜこんな路面で?なぜこんな時間に?なぜそんな格好で?)

(ーーあれは、一体何?)

(次々と浮かぶ疑問に背中を押されるように、ふらふらと足は勝手に動き出す。明らかに怪しいと変に近付かない方がいいと、頭では分かっているにも関わらず)

(前へ、前へ、前へ)

(やがて、止まる。その人物の前でぴたりと、止まってしまった)

(「いらっしゃい、お嬢さん」。フードの下で囁かれたその声はしわがれており、性別は分からなかった。おそらく年配の人物なのだろうと、あたりがつけられた程度だ)

(「ゆっくり見ていっておくれ。きっとお嬢さんの気にいるものがあるよ」。続けられた言葉に導かれるように、視線は自然とフードの人物の前に広げられている物へと移る)

(真っ先に目に入ったのはオレンジの明かりの正体だった。それは綺麗にくり抜かれ、中に火のついた蝋燭が入れられているジャックオーランタン。次に視界に入り込んだのは、その隣にあるボロボロの包帯。更にはくしゃりと潰れたとんがり帽子に、しわのよった黒いマント。錆びついたボルトに、狼の耳のようなものもある)

(どれもこれも薄汚れている上にボロボロで、正直なところとても商品のようには思えない。仮に普通のフリーマーケットでこれらが投げ売りされていたとしても購入する物好きはいないだろう。そのレベルのものだった)

(にも関わらず、自分は何故かそれらから目を離せずにいる)

(ここに足を向けてしまった時のようにふらりふらりと商品の中のひとつに手を伸ばし、そっと触れる)

(「まいどあり」。しわがれた声がそう囁いて、そしてーー)

(……)

(……)


@2023ハロウィン1