(……はて)

(どうして自分は真に土下座されているのだろうか)

…あ、あれ…?

…なんで俺お前に土下座してる、んだっけ…?

??

(不思議そうに真は言うものの、むしろ自分こそ知りたい。なんだこの状況)

(今日は、そう。自宅に帰って荷物の整理をして、それからいつものように真の家に遊びに来て、話をしたりこの日の為にと用意してくれたらしいお菓子を食べたり)

(それから、それからーー何故か真に土下座をされている今)

(釈然としない顔で立ち上がった彼と再び目を合わせ、同時に首を傾ける)

…なんかよく分からないけど、とりあえず俺、飲み物淹れてくるよ

うん…

……?

(しきりに首を傾げながら部屋を出ていく真の背中を見送り、その場にひとりぼんやりと佇む)

(今日はどうにも記憶が覚束ない、ような。自分にとって大事な何かが欠落しているような奇妙な喪失感を覚える、ような。だけどいくら考えてもそれがなんなのか全く分からないし、なんならその感覚もただの勘違いなのでは?とも思えてきてしまう)

(一体なんなのだろうか、と。そんなことを考えつつふと今の今まで彼が土下座を披露していたところに視線をやると、何やら妙なものが落ちていることに気付く。それはほぼ正三角形の……)

(…チョコパイ?)

(なんだこれは。なんで床の上に剥き出しのチョコパイが落ちているのだ。しかもふたつも。ご丁寧にもオレンジのチョコペンでハッピーハロウィンと書かれた謎チョコパイなど自分は用意していないし、持ってきてもいない)

(では真が?とも考えたが、仮に真がこれを用意したのだとしても少なくとも彼は食べ物を床に直置きしたり、またそれを放置するような人間でもない。たとえ「悪戯」であったとしても)

(ということは、これは真にも覚えがないものと見ていいだろう)

(うん、なるほど。さっぱり分からん)

(床に転がってから三秒どころか三十秒、あるいは三分。もしかしたらそれ以上は経過しているであろう可哀想なチョコパイを見下ろしつつ、真の帰りをただ待つのだった)
@ハロウィン期間終了2