ゴッホの……生前のこと、ですね。
なぜなら、わたしはヴァン・ゴッホの名を借る者にしてヴィンセントにあらず……
ヴィンセント=ヴァン・ゴッホではなく、クリュティエ=ヴァン・ゴッホですから。
ゴッホが…わたしが、引き継いだヴィンセントの記憶は、あまりに鮮明で情熱的な……
まさに、炎の画家と呼ばれるに相応しいものでした。ええ、苛烈なほど。
ゴッホの生涯には、多くの絶望もあったけれど……
それでも、その衝撃から察するに……
クリュティエとして生きていたときより、世界は明るく美しい色彩に満ちていたのです。
とっても眩しかった……鮮やかな色彩、太陽……
わたしは、ヴィンセントの臨んだ世界をもっと、見たい。色彩を見たい。
そして、わたしがゴッホならきっとこの絵筆を振るう限り、更なる絵の……新たな高みへと臨み続けるでしょう。
ゴッホの生涯は……常に挑戦でありましたから……
それを裏切らない限り……わたしは、ゴッホです。
ヴァン・ゴッホの名に恥じぬ、その生を歩む虚数生まれの異邦人。
願わくばどうか、あなたさまの傍で。
稀代の画家の描く絵画の数々……
エヘヘ、どうか、マスターさまの目でお収めを……
ヴィンセント