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名前:東奏学園器楽部

114回定期公演

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『蒼先輩、好きです。』




数十回、百数十回と聞いた彼の告白。




「それはどうも…。」




数十回、と返したこの返事。最初の内は彼の告白にみっともないくらいに動揺していたものだったが今となっては6文字、1秒もかからない。私に受け流された彼は少し残念そうな顔で近くの席に座る。

なんてことはない。ただの挨拶だ。









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「蒼はいつ彼と付き合うのかしら?」

「…珍しくここに来たと思えば、いきなり何の話だ。」

「あら、意外とそっけない反応ね。動揺してマンガみたいにコーヒーを吹きこぼすくらいするかと思ったわ。」

「同じことならさくら君や結菜君にもさんざん言われたんだよ。それと漫画のコーヒーを吹きこぼす表現は明らかに摂取量を超過した量を吹きこぼしてる。現実的ではない。」

「厳しいお言葉ね。」


器楽部の部長、草薙百花。多大な才能を秘めた指揮者であり毅然たる態度で器楽部を引っ張る。が、少々部員愛が過ぎることもあり器楽部の男子禁制も彼女が学校側に進言したと言われている。というかした。そして何より…。


「百花君は彼が他の部員に手を出すのはやめるように強く釘を刺していたんじゃないか?」

「えぇ、もちろん。」

「だったら…」

「でも、蒼が手を出すのは私は止められないもの。」

「な…!」

「私だって蒼が他の人のものになるなんて耐えられないわ?」

「…君のものにもなった覚えはないんだがね。」

「蒼は彼のことどう思ってるの?」

「…。」

「好きなの?」

「それは…もちろん。」

「後輩としてじゃないわよ?」

「分かっている。」




彼のこと。




「聞き方を変えようかしら。彼はあなたのことを好きだと思う。」




彼が、私のことを。




「…分からない。」

「類を見ないほどには彼の蒼への好意は露骨だと思うけど。」

「最初は私もそう思ったさ。だが、彼は私に毎日告白してくる。それを重ねていくうちに、彼が、本気でその言葉を口にしているのか…分からなくなった。」

「蒼の好きな実験なら何度も同じ結果が出るのはこれ以上に無い立証じゃないのかしら?」

「…からかわないでくれ。」

「ごめんなさい、意地悪しちゃったわね。」






「とにかく、最近の蒼は少し心配になって来るの。まるで毎晩悪夢でも見ているかのようにね。」

「…悪夢など見て、いない。」

「なら夢は見ているのかしら。」

「…。」

「とにかく、このままでは蒼もだけど、彼もかわいそうだわ。少し彼の自業自得でもあるけれど。」



「もう少し、向き合ってみてもいいんじゃないかしら。」




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実験は手につかない。思考がまとまらない。それもこれも百花君のせい…。




…いや、それは違うか。不確定要素を放置していたのは私だ。私が彼の言葉にまともに向き合わなかったのは私だ。




…向き合うべき時が来た、ということか。そうと決まれば行動だ。要は実験と同じ、いやむしろずっと単純な話。彼に直接本心を聞けばいいだけだ。そうと決まれば彼のところへ…。




彼のところへ…。




…彼の…。



…。




…まずは第三者のところへ行こう。客観的な意見は必要だからな、うん。








続く。