「ざわざわに混じるのは苦手だったので。いつも、音の鳴ってないイヤホンをつけていたような、気がします。」
「嫌われているというわけではなく、浮いている、というのが、正しいと、思います。」
「自分のぼそぼそとした声が嫌いで、だからこそ、憧れたのです。」
「おしゃべりと身振り手振り。それだけで、人を魅了することのできる噺家さん、に。」
「落語を覚えれば、私も、人様から注目してもらえるようなーーー。」
「そんな人間に、なれるような気がしたの、です。」
「音を漏らさずにいたイヤホンからは、落語の口演が流れるようになりました。」
「日々、演目を決めて稽古した、です。」
「見て、聴いて、まねて、」
「近くで公演があれば必ず出向きました。」
「自己流ではありますが、夢中で、精進しました。」
「
しかし、やがてふと、気が付いたのです。」