「あの、ごめんなさい」
(街中、不意に掛けられた声)
(声のした方を振り返れば、気弱そうな青年が困ったような表情を浮かべていた)
「僕、その、迷ってしまって……道を教えていただきたいんですが」
(特別時間に追われている訳でもないし、と頷きながら口を開いて──)
(声を出す前に、背後から伸びた腕に抑え込まれた)
(慌てて抵抗しても、男性らしい腕は振り解けない)
(それどころか口に布を当てられて、息が……!)
(咄嗟に見上げたさっきの青年は、笑って、いて)
(柔らかくて、それなのに冷たい笑みを見て、不意に今朝のニュースを思い出した)
(女性を狙う誘拐犯のニュース)
(街中での犯行、犯人は未だ特定されていない……)
(彼だ、彼らだ)
(彼らが誘拐犯で、私は今回のターゲット)
(……このまま攫われてしまったら、一体どうなってしまうんだろう)
(どこかに売られる? 乱暴される?)
(嫌な考えばかりが渦を巻いて、吸えない息が苦しくて、今にも意識を手放しそうになって──)
「
何してんだテメェら!!」