おっ。監督生くん、目が覚めたッスか?
(ん……、はい。)
(……、あれ?ラギー先輩……?)
そうッスよ〜、ラギー先輩ッス。
大丈夫?午後の授業休んでたでしょ。
(え、何で知って……、)
(それに、どうしてここに……?)
なんでって、魔法薬学。
合同授業だったの知らなかった?
(……知らなかったです。)
まーそりゃ朝から調子悪そうだったッスもんねー。
そこまで気が回らなくてもしょーがないか。
朝すれ違った時から、アンタ顔色やばかったッスよ。
……それに血の匂いもしたし。
心配してたら案の定、午後の授業に姿が見えなかったから。
多分ここにいんだろうなって、授業終わりに覗いてみたところッス。
シシシ、当たりっすね!
(そう言うと先輩は、口元に手を当てて得意げに笑った。)
(それは、ご心配をおかけして……、)
(て、あれ?授業終わったなら部活は……?)
あー、レオナさんに遅れるとしか言ってないんで、もう少ししたら行かなきゃッス。
(えっじゃあ早く……!)
(自分は大丈夫ですから……!)
……大丈夫そうに見えない子が何言ってんの。
こういう時は素直に甘えるもんッスよ〜?
(先輩の固くてかさついた手で、優しく頭を撫でられる。)
(少し日だまりの匂いのするそれに、安心して目を細めてしまった。)
……そうそう、そのまま寝てていいッスよ。
部活終わったら迎えに来るんで。
(……そんな、めいわくじゃ、)
迷惑とか考えなくていーの!
お礼はまぁ、元気になったらいっぱい貰うッスから。
ほら、ちゃんと暖かくして。
オレが来るまで、ちゃんといい子に寝て待ってるんスよ。
(ありがとうございます……。)
(大人しく目を閉じると、布団の上からポンポンと数回お腹を撫でられる。)
……お休み、ユウくん。
(少しして先輩が保健室を出ていった音を、微睡みの淵で聞いていた。)
……あーもう!
オレがお代貰わずに世話焼くのなんて、ユウくんぐらいッスよ!
……ハァ、分かってるんスかねぇ。この鈍感。
…ラギーせんぱい……?