名前:監督生

異世界に飛ばされて13日目


おっ。監督生くん、目が覚めたッスか?

(ん……、はい。)
(……、あれ?ラギー先輩……?)

そうッスよ〜、ラギー先輩ッス。
大丈夫?午後の授業休んでたでしょ。

(え、何で知って……、)
(それに、どうしてここに……?)

なんでって、魔法薬学。
合同授業だったの知らなかった?

(……知らなかったです。)

まーそりゃ朝から調子悪そうだったッスもんねー。
そこまで気が回らなくてもしょーがないか。

朝すれ違った時から、アンタ顔色やばかったッスよ。
……それに血の匂いもしたし。

心配してたら案の定、午後の授業に姿が見えなかったから。
多分ここにいんだろうなって、授業終わりに覗いてみたところッス。
シシシ、当たりっすね!

(そう言うと先輩は、口元に手を当てて得意げに笑った。)
(それは、ご心配をおかけして……、)
(て、あれ?授業終わったなら部活は……?)

あー、レオナさんに遅れるとしか言ってないんで、もう少ししたら行かなきゃッス。

(えっじゃあ早く……!)
(自分は大丈夫ですから……!)

……大丈夫そうに見えない子が何言ってんの。
こういう時は素直に甘えるもんッスよ〜?

(先輩の固くてかさついた手で、優しく頭を撫でられる。)
(少し日だまりの匂いのするそれに、安心して目を細めてしまった。)

……そうそう、そのまま寝てていいッスよ。
部活終わったら迎えに来るんで。

(……そんな、めいわくじゃ、)

迷惑とか考えなくていーの!
お礼はまぁ、元気になったらいっぱい貰うッスから。

ほら、ちゃんと暖かくして。
オレが来るまで、ちゃんといい子に寝て待ってるんスよ。

(ありがとうございます……。)
(大人しく目を閉じると、布団の上からポンポンと数回お腹を撫でられる。)

……お休み、ユウくん。

(少しして先輩が保健室を出ていった音を、微睡みの淵で聞いていた。)



……あーもう!
オレがお代貰わずに世話焼くのなんて、ユウくんぐらいッスよ!

……ハァ、分かってるんスかねぇ。この鈍感。

…ラギーせんぱい……?