(そう言うと、エペルくんは床に座り込んだままの私を抱きしめて髪を撫でた。)
……君が他の人と踊るの、嫌だな。
きっと引く手数多だもんね。
(えっ、あの、エペルくん?)
(抱きしめてた身体を少し離して、私の顔を覗き込んでくる。)
(華奢に見える細くて綺麗な指が頭の後ろに回って、ぐいと引き寄せられた。)
(近付いて来る顔に、何をしようとしているのか分かっていたのに。)
(何故だか目も逸らせずに、そのままエペルくんの薄い唇が私の口を塞いだ。)
(んっ、)
……ごめんね、君の気持ちも聞かないで。
でも、ずっと好きだったんだ。
さっき一緒に踊ってた時も、一緒に授業受けてた時も、ずっと君だけ見てた。
周りの人に比べて、僕は良い家の出身でも無いし、かっこいいと言われるような男らしい容姿もしてない。
ド田舎の農家の息子で、君に自信を持って選んでもらえるようなモノも何も無いけど。
……それでも、ドキッとしてくれたってことは、少しは可能性があるってこと、かな。
(えっと、あの、)
返事は今じゃなくていいよ。
僕はこれから、ヴィルサンよりも誰よりもすげぇ男になって君に選んでもらうから。
君を守れるような男になるからさ。
……それまでは、側で見ててね。
(そう言うと、エペルくんは立ち上がって私に手を差し伸べてくる。)
ほら、いつまでも床に座ってるわけにはいかないよね。
痛いところは無い?
(うん、大丈夫……、)
それじゃあ、手伝えることがあったら気軽に言ってね。
君に遠慮はしてほしくない、から。
(分かった、ありがとう。)
ふふ、パーティー中も他の人によそ見はしないでね。
……頑張って。
……でも、