(声をかけ続けているとうんざりした顔の史郎が出てきた。視線を逸らしながら部屋へと案内される)
……長内と暮らす方が幸せだったでしょ。なんの価値もない、誰からも必要とされない僕と一緒にいるよりも姉さんは長内と暮らした方が幸せなんだ。
街ですれ違った時に幸せそうな顔してるのを見ると惨めになった。憎いし腹立つし、本当にイライラした。
でも同時に微かだけど安心もしたんだ。ああ、姉さんを幸せにしたのは長内だって。僕なんていなくても何も変わらないんだって。
だから、僕から見た姉さんは幸せだと思ってた。幸せにしか見えなかった。金目当てなら金は蓄えているもの含めて全てあげる。だから帰ってよ。
姉さんを幸せにしたのは僕じゃなかったんだから
*お金なんていらない、史郎しかいらないの