(〇〇の病室でタオルを棚に入れ替えていると、病室の外で看護師たちが慌てていて、相手の男のことだと分かった瞬間、僕は奴を探していた)

……何、逃げようとしてるの? 自分が何してたのか分かってるの? 君が〇〇に近付かなせければ、こんなことにならなかったのに。人の家庭を滅茶苦茶にして、ただで済むと思うなよ……。

(どうせ〇〇の気持ちも彼女自身も僕の元には戻ってこない。なら、もう良いんだ。相手の男のことをつかんで彼女の病室に連れて行き、そのまま帰り支度をした)

僕がずっと待ってても、声をかけても目を覚ましてくれないんだ。僕じゃ駄目なんだよ。君の声を聞いたらきっと目も覚まして……そしたら幸せにしてあげてよ。

(帰り支度をして部屋を出る。あんなに悔しくて辛くて悲しいはずだったのに、それすら感じなくなった。自宅に戻ると心配して来た親がいた。何か言ってるが心底どうでも良い、食事を作って貰っても味が分からない。美味しいって何だ? 愛って何だ? 何で〇〇の顔がチラつくんだろう……辛いなら、もう終わらせてしまいたい。キッチンへ向かい包丁を手に取った僕はそれを自分に突き立てる。周りの叫び声も痛みもよく分からない。もうそんなことどうでも良い。最後に感じた胸の痛みの理由も視界がぼやけた理由も、分からないままで終わりを迎えた)
♂先に目を覚ました不倫相手が逃げようとする