(やっべ…降って来やがった……)
<突然の雨に傘を持っていなかった一郎は急いでうちに向かって駆け出した。
雨脚は段々と強くなり、辺りが徐々に暗くなって行く……その時、ふいに一郎の耳を 微かに雨以外の音が掠めた……>
(…路地裏から聞こえるな)
<か細いその音に妙に後ろ髪を引かれる思いがする…
路地裏に足を踏み入れると、雨に濡れすっかり形を失いつつあるダンボールが目に入った>
…ゃー……みゃー………
猫…?ッマズい……おい、オイッ。寝るな、寝たらお前死ぬぞッ
<ダンボールの中に横たわる、辛うじて薄目を開ける猫をすぐさま抱え上ると 雨の水を吸い、冷たくなっている小さな体をタオルに包み 迷わず懐に入れる…>
ここら辺の動物病院……
(まだ開いてるか?早くしないと間に合わなくなるッ…)
<虫の息のようなか細い息を繰り返す体を気遣いながら、一郎は即座に一番近い病院に向かって走り出した……>
<その後、何とか一命を取りとめ 無事山田家の一員になるのは、もう少し先のお話…。>
♪出会い