(プツッ、)

>山田一郎か、珍しいな。

毒島っ…さん。…えっと、ご無沙汰してます。弟たちが世話になってて、

>畏まらずとも、普段通りで良い。そちらからコンタクトを取ってくるとは、なにか頼み事だろうか。

…話が早くて助かる。単刀直入に言うと、あんたの助けがほしい。いまイケブクロでは、違法マイクによるとある事件が起きててな…
一夜にして吸血鬼みたいな牙が生えて、血を飲まない限りは空腹と喉の渇きが癒えない…吸血鬼モドキみたいになっちまうっていう事件だ。

>それなら、小官も既に聞き及んでいる。今朝ラジオで言っていたからな。…その口ぶりでは、貴殿が被害に?

…ああ。おかげで、気を緩めるとぶっ倒れそうなぐらいだ。だからっ…

>小官の助けが必要だ、と。…力になってやりたいのは山々だが、すまない。…小官では力になれそうにない

…そう、か。

>恐らく、動物の血液が欲しいということなのだろうが…実は、昨日料理にすべて使ってしまったのだ。それまでは、エゾ鹿やヘビの血を溜めていたのだが…
今から獲物を狩りに行っても、よほど大きい獲物でなければそこまでの量が取れない上に そちらに届けるにも些か時間が掛かる。

つまり、現実的じゃない…か。

>…力になれず、心苦しい限りだ。
残る選択肢としては…肉親や、心を許せるものに血液の供給を頼むか、輸血等の血液を飲むか、見ず知らずの人間に供給を迫るか…だな。

…力づくじゃ、それこそ現実的じゃない。そんな事をするぐらいなら、心臓を杭で貫かれた方がマシだ

>だが、そういった事象も既に起きていると聞く。貴殿の兄弟たちはもちろん、己が守りたい存在には一層気を配った方が良いだろう。
…もっとも、それだけの身体的余裕が今の貴殿にあれば…という話だが。

……ご忠告、ありがとうございます。

>とにかく、誰かから少量でも血を貰うことだ。先の事を考えるには、まずそれが先決だろう。…例えば、いま一緒に居る相手は?

っ…俺が一人じゃないって分かるのか?

>物音がするからな。関係性までは分からないが…兄弟でないことは分かる。そして、恐らく大切な人であろうことも。

…あんた、ほんと何者なんだよ

>小官は軍人だ。…では、失礼する。

(プツッ、ツー…ツー……)

…って事だ。毒島の手は借りられないし、ただこっちの情報をくれただけになっちまったな……

(一郎は言いながら椅子に腰を下ろし、片手で頭を支えるようにして 何かを考えるように視線を落とした…
……よく見ると、その手は何かを押さえるように小刻みに震えている)
☆数コールの後…