彼女は考えていた。
どうやって退屈を紛らわせればよいのかと。
一匹の竜として生まれた彼女は ―多くの竜がそうしてきたように―
腹が減れば近くの村を襲って作物や家畜を食い荒らし、
虫の居所が悪いときは見境なく暴れ、
たまに討伐隊でもやってきたときには土に還してやった。
そうやって長い時間を過ごすうち、次第にある種の感覚を覚えていく。
外敵もいない、食べ物にも困らない今の生活は退屈極まりないと―
人間どもの討伐隊が来なくなったというわけではない。
しかし、一撫ですれば力尽き吐息をすれば燃え尽きるような
脆弱な人間どもの討伐隊など彼女の敵ではなかったのだ。
どうすれば自分を退屈させない者が現れるのか?
考えた彼女は一つの結論にたどり着いた。
弱い人間が強くなるのを待つのではなく、自分が人間に合わせればいいのだと。
そう考えた彼女は人間の姿を取ることにした。
人間の姿となってからは、さすがに何度か命の危機を覚えることもあったが
その場合は必要に応じて部分的にドラゴン化することで危機を乗り越えていく。
卑怯?まさか。人間だって言っていたはずだ。
「お前なんて左手だけで十分だ」などと。
それと同じことを自分がやって何が悪いのか。
こうして戦いの中で退屈を紛らわせる事に成功した彼女だったが、
ある日目覚めると自分が全く知らない世界に転移していることに気づく。
これまで味わったことのない事態に面食らった彼女だったが、
考えても仕方ない。まずはその辺で飯でも食えばいい。
この世で最も強く大きなドラゴンたる妾が出向けば人間どもが献上する飯を用意するだろう。
用意しないなら力づくで出させるまで。
腹を空かせた災いは、あてもなく未知の世界を歩き始めた…
「ナナ詳細その2」