名前:シャルロット

同じ部屋で過ごした日数50日目

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ヘレネとグレンが戦闘する傍ら、倒れていた優は頬に手を当てた。
掌に血がつく。

(痛い……)
先生が言っていたのはこういう事だろうか。
ボクはただお父様やお母様に会いたいだけなのに。涙が瞳に溢れそうになったその時、右手の指輪が光った。
そうだ。泣いてる場合じゃない。何とかしてこの事態を打破しなければ。

(そういえば、もし対処しきれない危機や困難に直面したらこれを使うといいって…でも、どうやって使うんだろう?)

(この指輪を使いたい……!)

優が念じたその時、指輪から眩い光が溢れ優の全身を包み─

──優は別の姿に変わっていた。
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「くっ!」
電磁ムチを躱しつつも次第に追い詰められるヘレネ。
「全く手間をかけさせるな…?ん?」
ヘレネとの戦闘で優の存在を忘却の彼方に置いてきたグレンは、肩を叩かれて無意識に振り向いた。
瞬間、おもむろに飛んできた体重を乗せた全霊の拳に頬を打ち抜かれる。

「がはぁっ……!?」
グレンは状況が整理できないまま倒れ込む。

「一発は一発だ。あぁ~痛かったなぁ~?お前にとっちゃあついさっきの事だろうがあたしにとっちゃ5年分のパンチだぜ?おら、立て」

「ゆ、優……?」そしてヘレネも状況が整理できない。

「ああ、説明は後。まずこいつをぶっ飛ばすからな」

「ぼ、僕の顔に……!アオイ様に認められたボクの、この顔によくも、よくも……!許さない、許さないぞ!」
殴られた頬を擦りながら顔を怒りで紅潮させるグレン。

「んだぁ?人の顔に平気でナイフ突き立てといてテメーの顔がちょっと殴られたらギャーギャー喚きやがる……ムッッカつく野郎だな、っとに」優が呆れ顔で悪態をつく。

(ちょっと……?)ヘレネは疑問を感じたが黙っている事にした。

「許さない!お前だけは……絶対に許さないぞ!覚えておけ!次会う時にはお前を必ずアオイ様の手駒にしてやる!」
グレンは憤怒の形相を浮かべたままそう叫ぶと──電磁ムチと短刀を握りしめたままゆっくりと消えていった。

「……野っ郎、逃げやがった」
ふっ、と鼻を鳴らすシャルロット。

「ゆ、優なのか……?」
「ん?ああ、おっす」
「君、いや…その……」
「?」
「あ、いや……無事なのか?」
ついてっきり少年だと思っていた、と喉まで出かかったがヘレネは堪える。

「ああ、さすがに5年もすりゃな。ああ、今のあたしはヘレネの知ってるあたしとはまた違うっていうか…違わないけど…
んー、ちょっと説明が難しいな。とにかくここで立ち話もなんだし師匠のところへ帰る。ヘレネも来てくれ」

つづく
「シャルロットの過去5」