私の肩をどけたのは少年だった。
彼は迷うことなく、月彦さんの元へ駆けていく。
少年はそのまま月彦さんの肩に掴みかかり、月彦さんが振り返った。
……先を越されてしまった。
あんな冷血漢なのに、意外と知り合いが多いみたいだ。
私だって月彦さんと話したかったのに。
何を話しているか聞こえないけど、ぼんやりと月彦さんを眺めていたら、
月彦さんが私の方を見て何やら口をぱくぱくさせた。
なんだろう、金魚の真似かな。
私が小首をかしげると、月彦さんは残念そうに目を伏せる。
すると、突然月彦さんの手が男性の首に伸びた。
私はその瞬間を、見てしまった。
そして悟ってしまった。
あれは金魚の真似事ではなく、彼は私に警告をしたのだと。
まずい、と本能的に思った。
反射的に月彦さんを見ると、顔立ちは変わらないのに、いつもと違うような別の人のような表情をしていた。
全身の血が引いていく感覚。
私は彼がたまらなく恐ろしく感じた。
逃げなければいけない。
月彦さんからできるだけ遠い、見つからない場所に。
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